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ベタ・ルブラ
簡単
| 弱酸性 | 中性 | 弱アルカリ |
|---|---|---|
| 良好 | 良好 | 可 |
※上記はGoogleMap上での代表地域を示したものです。厳密な生息範囲ではありませんので、参考情報までに。
主な特徴
「ベタ・ルブラ（Betta rubra）」は、スマトラ島北部に生息するベタ属の一種です。
ルブラはラテン語で「赤」を表す通り、ワイルドベタ（特にマウス型）の中ではとりわけ真紅に染まる体色が特徴のベタであり、また黒く太い縦ライン模様が複数本入るのも区別するポイントとなります。
一方のメスは赤くならない体色で、背びれと尻ビレ後端も伸びず総じて地味です。
常に鮮やかな一般的な改良ベタと比べ、美しい真紅は落ち着いた状態でないと発色しませんので、お店で販売されている状態では魅力がイマイチ伝わりにくい魚です。
しかし飼育者に見せる真紅の赤は非常に美しく、更に口内で卵を保育するマウスブルーダーという繁殖形態も非常に魅力的で、ワイルドベタの楽しみが詰まった魚といえるでしょう。
体長も5cmほどと丁度良いため、初めてのワイルドベタとしてもオススメです（飼育も容易種）。
YOUTUBE参考動画
YOUTUBEにアップロードされている動画のうち、種類が分かりやすいものを紹介します。
※当サイトとは関係がない第三者によるものです。動画共有が許可されたものを紹介しておりますが、権利者からの要望には真摯に対応させていただきます。
混泳・性格
温和ですが、近縁のアナバス・シクリッドとはちょっと相性が悪いです。
ワイルドベタの中には他魚のヒレをかじったり追い払ったりするものも多い（特に中～大型ベタ）のですが、本種は比較的温和な方です。
他魚との同居については近縁なベタを除外すれば、大体うまくいくでしょう。グラミーとシクリッド等については、近縁かつ遊泳層が被るのでやや折り合いが悪いところはありますが、それを除き多くの魚種と混泳させることが出来ます。（殺し合うほどではないが・・・）
もちろんオス同士は改良ベタほどではないにしろ、同種間で争うんで大きい水槽でなければオスは１匹までとして下さい。そもそもお店ではペア売りが基本になりますので、そのままペアで飼育されるのが基本です。
エサ
初期にのみ冷凍赤虫が必要な傾向がありますが、人工飼料には慣らしやすい魚です。
基本的に本種は現地で採取されたワイルド個体が、日本に輸送されて販売されます。
よって輸入後しばらくは人工飼料を与えても「？」という感じで、食べない傾向があります。冷凍赤虫であれば購入後でもまず食べてくれますので、購入後しばらくはそれをベースに与えて食事を確立させて下さい。
しかしながら本種は人工飼料の餌付けは容易であり、早期に人工飼料をバクバク食べてくれるようになる魚なので、さほどエサに苦労する魚ではありません。冷凍赤虫を与えてしばらく安定した後に、少しずつ人工飼料を与えていきましょう。
（もちろんお店で人工飼料をバクバク食べているなら安心ですね）
なお人工飼料のうち食いつきが良いのは「デル フレッシュフード」など嗜好性の高い粒エサでしたが、慣らしさえすれば割とどのような人工飼料でも食べてくれます。
飼育ポイント
丈夫で飼育しやすいですが、飛び出しだけは要注意です。フタ必須。
本種は水質への適応範囲が広く、弱酸性～弱アルカリ性まで広く適応し、水質悪化にも強いです。比較的飼育がしやすい熱帯魚と言えるでしょう。
しかし水槽外へジャンプして死亡する事故が起こりやすいのでこの点だけは注意して下さい。よって水槽には全面覆うフタを必ず設置すること。
普段からジャンプする魚ではないものの、驚いた時やエサが水草に挟まってしまった時などにジャンプが選択肢としてある魚なので、忘れた頃に飛び出して殺してしまうケースがかなり多いです。（水槽内に浮かべた稚魚の隔離ケースとかに入ってたりします）
死因の多くが飛び出し事故によるものなので、フタさえしっかりすれば特に注意することはありません。
繁殖
繁殖は容易で、うまく飼育していれば定期的に自然産卵します。
本種は一般的な改良ベタと異なり、泡巣ではなく「マウスブルーダー」という口内で卵を保育する繁殖形態をとります。
マウスブルーダー型のベタは、成熟した雌雄が揃っていて健康的に飼育さえしていれば定期的に産卵・口内保護を行うものが多く、本種も同様です。メスの健康・栄養状態が良ければ、2週間～1ヶ月ごとに産卵が繰り返されます。
稚魚は孵化したブラインシュリンプを摂食できる大きなサイズであるため、稚魚の育成についても難しいところはありません。
雌雄の違い
本種は成熟していると雌雄で色彩が異なりますので、雌雄の判別は容易です。
オスは未発色でも少しは赤いので一目瞭然で、また「体高が大きい」「卵を口で保育できるよう頭部が大きい」「背びれと尻ビレ後端も伸長する」といった特徴もあります。
一方のメスは先述した特徴がなく、スリムで地味です。体長もひとふた回り小さいですね。
なお小さく未熟なオスは、メス同様に地味であるためそこだけ間違えないよう注意して下さい。稀ですがペア販売であってもオスと未成熟オスの「オス&オス」で売られていることも過去見かけました。
包接・産卵
メスはエサをしっかり与えるとあっさり（2週間程度で）卵管がバキバキになり、そうなるとオスに産卵を促します。オスが産卵したいメスに応えると産卵行動が始まります。
産卵については泡巣タイプのベタと同様、オスがメスの腹に巻き付いて卵をひねり出すという特異的な産卵行動です。
ひねり出され地面に散らばった卵は、先にオスが拾い始め口内に蓄えます。後からメスも口で卵を拾うこともありますが、最終的にはオスへ卵を引き渡します。
なおワイルドベタは低pH・軟水が基本とされる種がいて誤認されやすいのですが、マウスブルーダーのベタは日本の水道水をカルキ抜きした水で構わないモノが多く、本種においても同様です。（pH8.0でも稚魚がとれるし育つ）
オスの口内保育開始
包接・産卵行動はタイミングが合わないと見ることはできませんが、卵を口に咥えるとオスの下顎部分がポコッと膨れるため明確です。
産卵後は4日程度で孵化しますが、孵化した稚魚はヨークサック（栄養玉）が非常に大きくそのままオス口内で成長を続けます。（温度や環境によって孵化日数は差があり）
保育するオスに対し、メスは保育に参加しません。むしろオスの邪魔になりますので、掬いやすいタイミングがあれば取り出した方が良いです。ただしオスを刺激してしまうとビビらせてしまうと保育を諦めて食卵につながりますので、無理のない範囲で行って下さい。（あくまでオスを刺激しないでメスを取り出せそうな場合にのみ）
さてマウスブルーダーのベタで最も難しいのが、いかにオスに食卵・食子をさせずに保育させるかに尽きます。原因としては色々推測されますが食卵の可能性が高いと思われる環境でもアッサリ稚魚が取れたりするので、運・オスの保育力にも大きく影響されるところがありますね。
このあたりにつきまして長くなりますので、以下の別記事をご参照下さい。
★準備中
稚魚の育成開始
孵化後10日・産卵からは2週間ぐらいでヨークサックがほとんど吸収され、オス口内から出てきて水槽に散らばります。
ここから飼育者による稚魚のケアが必要ですが、オスの口内からでてきた稚魚は大きく、孵化したブラインシュリンプを十分食べられるサイズなので育成は非常に容易です。
ただし放たれた稚魚は即エサの摂食が必要ですので、稚魚が出てきたタイミングに間に合うようあらかじめブラインシュリンプの孵化を準備しておきましょう。（実際は微生物食べてなんとか生き延びたりしますが、遅れればそのぶん数が減る）
細かい人工飼料も嫌々ついばむこともありますが、栄養不足で多く死んでしまうため、初期は基本的に孵化したブラインシュリンプを使うべきです。
なおオスは稚魚を食べないので一緒の水槽で育てても、オスを隔離してもどちらでも構いません。ただ大きい水槽だと稚魚のエサやりが大変なので、そういう場合は稚魚を隔離ケースに集めたほうが良いかと思います。
しばらくはブラインシュリンプがメインになりますが、大きくなれば刻んだ冷凍赤虫や稚魚用のフードも摂食していきますので、成長にあわせてエサを調節し育成していきましょう。
ここからは大きさに合わせて、エサをステップアップ。
その他・補足情報
古くから知られていたが、ホビーアクアでは最近の魚
種が記載されたのは1893年とかなり昔なのですが、「ベタ・スプレンデンス」じゃないのか？と非常に長らくの間誤認されていました。実際に日本の古い熱帯魚飼育書ではベタ・ルブラの名前で、スプレンデンスっぽいベタのイラストが書かれております。
しかし記載論文ではスプレンデンス種の分布域ではないスマトラ島のトバ湖とシボルガ（Lago Toba. Siboga.）で発見されていることと、採取標本が泡巣のスプレンデンスと明確に異なりマウスブルーダーであるフォーシィ系のベタっぽいということで、2000年前後に再調査されることになります。
結果スプレンデンスとは全く別の種であることが明確に確定し、ルブラは2012年に再記載論文が発表されることに至りました。
海外では「Toba betta」という名称で呼ばれることもあるようですが、これは原記載の発見地の片方がトバ湖であることに由来するかと思います。
さて2010年以降は現地の採集者が精力的に活動しているようで、どんどん入荷が増え今では割とコンスタントに入ってきます。昔は幻のベタと言われていましたが、現在（2025年）はベタ属としてはのメジャー種の1つですね。
とはいえ現地の治安が悪くなったり、土地開墾や逆に保護指定されると入荷しなくなるのも野生動物あるあるなので、入手できるうちに累代する愛好家は望まれます・・・。
（例えば昔沢山見られたラッコはいなくなりましたね～）
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参考文献
- 1893. ALBERTO PERUGIA. "DI ALCUNI PESCI RACCOLTI IN SUMATRA DAL DOTT. ELIO MODIGLIANI".
- 2004. Robert J. Goldstein. "The Betta Handbook".(commercial publication)
- 1932. 鷹司信敬著. "熱帯魚".(commercial publication)
- 2012. Ingo Schindler, Stefan van der Voort. "Re-description of Betta rubra Perugia, 1893 (Teleostei:Osphronemidae), an enigmatic fighting fish from Sumatra.".
- 2010?. ベタショップフォーチュンのWEB記事「最後に残された幻のベタ」.”https://www.bettashop.net/hpgen/HPB/entries/16.html"（web site)
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