
公開:
キフォティラピア・フロントーサ
気をつけたい
うつ病で死ぬ
弱酸性 | 中性 | 弱アルカリ |
---|---|---|
可 | 良好 | 良好 |
※上記はGoogleMap上での代表地域を示したものです。厳密な生息範囲ではありませんので、参考情報までに。
主な特徴

「キフォティラピア・フロントーサ」は、アフリカのタンガニィカ湖北部に生息する熱帯魚です。
淡水魚ながら白い体色に黒い縦バンドが入る強烈なインパクトを持ち、重厚な体つきと頭部コブからなるシルエットは非常にユニーク。東南アジアで活発に養殖され、日本においても安定的に安く手に入る定番熱帯魚の1つです。
ロカリティ(地域変異)が存在し、最も流通している東南アジア産のものは「ブルンディ(Burundi)」というタイプが元になっています。ブルンディは30cm超えの大型になるロカリティですが、次に流通の多い7バンドタイプは20cmほどが目安です。(ロカリティについては末尾に解説)
オスもメスも頭部にコブを持ちますが、コブの大きさは体長に比例します。メスはオスよりもひとふた周り小さいため、非常に発達したコブを持てるのはオスのみです。




YOUTUBEシェア
YOUTUBEにアップロードされている動画のうち、種類が分かりやすいものを紹介します。
※当サイトとは関係がない第三者によるものです。動画共有が許可されたものを紹介しておりますが、権利者からの要望には真摯に対応させていただきます。
混泳・性格
攻撃性の低いシクリッドで混泳はしやすいです。
本種はシクリッドの中ではかなり攻撃性が低く、個体差もよりますが概ね混泳相手に悪さをすることはあまりありません。
口に入らない程度の魚であれば混泳可能で、口に入る魚でもネオランプロローグス属・ジュリドクロミス属などの稚魚には全くの無関心なほどです。
ただその大人しい性格ゆえシクリッド同士の混泳であれば、どちらかというとストレスを受ける側です。よってでかいシクリッドとの混泳はやや不向きです。

エサ
沈下性で消化に良いものが適します。

エサはそれなりに何でも食しますが、沈下性でかつ消化に良いものがベストでしょう。
具体的な製品としてはデルフィスの「デルフレッシュフードSM~M」、次点で「グロウ 沈下タイプ C~E」を沈めて与えるのがオススメです。
飼育ポイント
丈夫な熱帯魚ですが、pHの降下には気をつけて下さい。
非常に丈夫な熱帯魚で基本的に魚を飼える最低限の設備さえ整っていれば飼育可能です。
ただし換水頻度がフン尿の量にあってないこと等によるpHの降下し過ぎには弱いのでこの点だけ注意しましょう。
ろ材にカキ殻やサンゴ砂を入れると安定して高pHを維持できるので、それらを用いれば水質面に気を払うことはほぼなくなります。
繁殖
狙えば繁殖は容易です。
本種は成熟したペアを状態良く飼育していると、自然と繁殖行動を行うので繁殖は容易です。
ただし繊細な性格のため大きな他魚がいるとビビって繁殖行動を起こしませんので、狙う場合は単独ないし水槽の主役にする必要があります。
またフロントーサは一般的なシクリッドと比べて成長がかなり遅く、成熟までに2年ほどはかかるのでその点も踏まえて育成に臨みましょう。
さて近縁種のギベローサ種の繁殖写真を交えて紹介していきますね。
雌雄の見分け方

一回り小さいのが最も分かりやすいポイント。
明確な性的2型はありません。
育てきっているのであれば最終サイズが最も分かりやすく、オスはひとふた周り大きくなります。よって複数匹購入し一番大きなものはオスの可能性がかなり高いでしょう。
頭部のコブで見分けることが可能と主張する飼育者もいますが、コブのサイズは大きさに比例していることを踏まえなくてはいけません。要するに若いオスと大人のメスを見分けることは難しいので、十分に成長させた上で判断すべきでしょう。
産卵
調子よく飼育していればいずれ定期的に産卵を行います。
メス側が卵を口に咥えて保護する「マターナルマウスブルーダー」ですので、メスの口・下顎が膨れていれば抱卵状態です。卵を咥えた状態ではエサを食べませんのでエサ食いの際に気づくこともあります。



ペア形成後は、およそ2ヶ月半おきに産卵を繰り返します。
自然下ではアピストグラマのようにハーレム形態ではなく、ペアで生活を行い水槽下でも決まったメスとしか繁殖行動を起こしません。よってペア確認後は他魚を除けた方がその後の経過は良いでしょう。
口内保育
稚魚は3日ほどで孵化しますがヨークサックが非常に大きく、産卵から30日ほどは親の口内で過ごします。その後は自然と親の口から出てきます。


ヨークサックは30日ほど持ちますが、2週間ほどから小さなプランクトンを摂食するため人工保育する場合は早期にブラインシュリンプを給餌することが有効です。(本来は親がプランクトンを口に入れていて世話しているのだと思われます)


稚魚は非常に大きく、まだお腹にヨークサックが残る。
保育失敗時の夫婦仲に注意
ストレス等でメスが保育を諦めて、卵を食ってしまう場合があります。
そうするとオスが激怒りし、メスへのあたりが強くなるので水槽サイズが小さければ(60ワイド)、セパレートしてしばらく隔離する等のケアを行ったほうが良いでしょう。
稚魚の育成開始
親の口から出てきた稚魚は非常に大きく、初手から刻んだ冷凍赤虫・小粒の人工飼料を摂食可能なため、その後の飼育はほぼ親魚と同様です。

その他・補足情報
ロカリティ・タイプ
東南アジア養殖のスタンダード

主に何も書かれずに「フロントーサ」として売られているものは、「東南アジア」で養殖されたものです。
元になったのは「Burundi(ブルンディ)」というブルンジ共和国のロカリティで、それらは非常に大型になり稀に35cmほどになるオス個体がいます。
元がブルンディであるため東南アジア養殖=ブルンディとして扱うショップもいますが、東南アジア養殖は平気で交雑を行いますので、個人的にはブルンディとして扱うのはやや懐疑的です。とはいえブルンディの一括りはかなり広域(区・村とかじゃなくて国)なので、あまり気にする必要もないかもしれませんね。
上記写真はオス個体なのですがまだ小ぶりなオスであり、一部の大型化したオスはコブの発達が妖怪クラスです。YOUTUBEにアップされている動画を紹介しておきます。
なおこのタイプを元にしたと思われる「ブラックウィンドゥ」といった模様乱れや、「ブラウン」といった黒バンドが赤みかかっている改良品種も東南アジアで作出されています。
キゴマ

もう1つのタイプと知られるのが「キゴマ」のロカリティです。キゴマは「タンザニア連合共和国」のロカリティであり、タンガニィカ湖の中部東側に位置しますので、ブルンディと比べると南東に位置しますね。
先述したタイプはバンド本数が6本ですが、キゴマはバンド本数が7本であることが特徴です。その他にも目の下の黒バンドが幅広くなり、逆に頭部側はほぼ目立ちませんので、かなり見た目の雰囲気が異なっています。

また先述したブルンディと比べるとひとまわり小型であり、オスで20cmほどが目安です。これは日本の多くの飼育者にとっては嬉しいポイントかもしれません。
なおキゴマ以外にも7バンドが生息する地域は他にも存在し、過去東南アジアから「キゴマ」表記ではなく「7バンド」として販売される機会もありました。キゴマ=7バンドであっても7バンド=キゴマではいので混同には注意して下さい。
むしろこちらが本家
ホビーアクアリウムでは6バンドが代表的なフロントーサなものの、実はフロントーサのホロタイプ(基準標本)はキゴマ・7バンドタイプなので、7バンドがTHE・フロントーサなのです。
そんな背景から海外のマニア間では7バンドタイプが「frontosa」であり、6バンドの一般的なやつは「sp. “North”」として扱われたタイミングもあります。その後2006年に「検証したが7バンドも6バンドも同じフロントーサ種で、それらはモルフの違いに収まる」といった内容の論文が出まして、現状はどちらもフロントーサ種として扱われています。
ギベローサ種

過去フロントーサの「ザイールブルー」「モバ」「ムピンヴェ」など青いフロントーサとして販売されていたロカリティは、2003年に分別されギベローサ種(Cyphotilapia gibberosa)として定義されました。
当サイトでもギベローサは別ページに分別しておりますので、詳細はそちらを御覧くださいませ。こちらも20cmほどでフロントーサ ブルンディと比べると一回り小型です。
参考:シマシマでデカくない魚は?
縞々のマリンボーダーを持つフロントーサは非常に魅力的な魚でありますが、体長20~30cmとかなり大きいのは多くのアクアリストにとって悩ましい問題です。
さてフロントーサより小型で似た魚(縞々模様を持つ青系の魚)はいくつか存在しますので、一般的に入手できるものをいくつか紹介しておきます。
ネオランプロローグス・キリンドリカス

体色は涼しげで青白い魚です。体長10cmほどと小柄。
シルエットはスリムですが、性格も(シクリッドとしては)大人しい点もオススメできます。
ネオランプロローグス・トレトケファルス

こちらは体長12cmほど。体色はどちらかというと黒っぽいのですが、シルエットはこちらの方がよく似ています。
ただトレトケファルスは性格がシクリッドらしくそこそこ荒いですね。結構他魚に対して睨みをきかせたり、小型魚なら襲ってしまう性格を持ちますのでその点はネックです。(まぁゴールデンゼブラなどと比べるとかなりマイルドではあるんですが・・・・)
ブログでのレビュー/批評も歓迎!
参考文献
- Tetsumi Takahashi, Benjamin Ngatunga, and Jos Snoeks. Taxonomic status of the six-band morph of Cyphotilapia frontosa (Perciformes: Cichlidae) from Lake Tanganyika, Africa.
- Tetsumi Takahashi and Kazuhiro Nakaya. New Species of Cyphotilapia (Perciformes: Cichlidae) from Lake Tanganyika, Africa.
この記事へのコメント