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ナノクロミス・パリルス
難しい
水質悪化にかなり弱いうつ病で死ぬ淀み由来の病気にかかる
弱酸性 | 中性 | 弱アルカリ |
---|---|---|
良好 | 良好 | ✕ |
※上記はGoogleMap上での代表地域を示したものです。厳密な生息範囲ではありませんので、参考情報までに。
主な特徴

「ナノクロミス・パリルス」はアフリカの河川に住む小型シクリッドです。
淡い多色の色彩が特徴で、ほんのり虹を思わせる美種。特にメスは婚姻すると腹部に紫色がかかるので特に美しくなります。
ナノクロミス属は似たものが多数おり、特に「ナノクロミス・トゥジェルシー」「ナノクロミス・ヌーディケプス」とはよく似ています。判別点としてパリルスは「尾びれ最上部に白のラインが1本入ること」「尾びれの上側が黄色地で、複数の赤~黒のライン模様が入ること」、そして「背びれ後ろ側に黒斑が入らないこと」が区別ポイントになります。
本種はオスの色彩パターンは2タイプが存在し、尾びれ下部に赤斑を持ち背びれの白ラインが薄いものが存在しますが、どちらも同種内の色彩多型です。
入荷名(インボイス)はヌーディケプスで入ってくることがありますが、尾びれに複数のライン模様を持つことから大抵本種でしょう。




尾びれ下部に赤の赤斑模様が入り、背びれの白ラインも目立たない。
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混泳・性格
同グループの魚に対して攻撃的ですが、中層を泳ぐカラシンには基本的に無関心です。
同種や同じシクリッドの魚に対しては排他的であり、強く追いやろうとする行動をとります。
同種に関しては特に激しく、基本的に水槽内ではオス1匹までに留めるのが基本。メスに対してもあたりが強いのでペアでも45cmでギリギリ、できれば60cm水槽はないとメスの食が細くなってしまいます。
中層を群れるテトラ類にはさほど関心をよせず、基本的には混泳可能ですが産卵を行うとより排他的になるのでこの点は留意して下さい。巣穴は底に作られますので、底面周りを近づくようなタイプの魚とは避けた方が良いでしょう。
エサ
沈下性の人工飼料が適します。
本種は底棲のシクリッドになりますため、沈下するエサが適します。
本種だけなら沈下性の粒状エサがスタンダードですが、混泳魚がいる場合はフレーク状フードでも可能です。
輸入直後は慣らしが必要
最終的には嫌がらず人工飼料を食べますが、入荷直後は慣らしが必要です。
できれば入荷一定期間おいて人工飼料を食べて安定したものを購入したいところですが、本種は入荷が少ないのがネック。待っていると他のマニアに抜かれてしまうリスクがありますので、入荷後早めの購入は割と一般的です。
その場合まず冷凍赤虫を前提とし、少しずつ人工飼料に慣らしていって下さい。

飼育ポイント
水質自体は水道水で良いものの、水質悪化にはとても敏感なので油断は許されません。
本種は弱酸性~中性から広く適応しますが、ろ過能力の欠如・水質悪化には非常にシビアなためこの点は最も注意して下さい。その打たれ弱さはフィルターが1日止まるだけで死に直結するほど。
よってフィルター流量低下のサインが見られたらすぐにメンテナンス等行い、ろ過能力が失われないよう気を払う必要があります。また水槽にいれる魚の数も過密よりかは少なめの方が余裕があって良いでしょう。
水質面について
水質は中性~弱酸性~中酸性の範囲でなら、広く適応します。
サンゴ砂を入れるなど高硬度にしない限りは特に問題ありません。
性格が臆病
本種は性格がかなり臆病であり、落ち着いた環境を用意できないと中々前には出てきてくれません。
そのためには隠れ家となる構造物が置けて広間も用意できるような「ある程度大きな水槽」が良く、具体的には60cmぐらいの水槽を用意した方が飼育を楽しめるでしょう。30cm以下の水槽ではほとんど前に出てこず、メスはオスに追いかけ回され続けるといったことになりかねませんので・・・。

繁殖
繁殖は十分狙えますが、オスのメスに対するあたりが強いので注意が必要です。
繁殖で最も難しいポイントはオスのメスへのあたりの強さです。これを解決すれば繁殖は難しくなく、簡単に産んでくれます。
なお繁殖させるには軟水弱酸性が必須と主張する愛好家もいますが、pH7.5・GH4.0の水道水でも産卵・保育を行いますので、水質面の調整は不要な場合が多いでしょう。
雌雄の違い


メスはオスよりもひとふた周り小柄であり、調子よく飼育を続ければ肛門付近に卵管が見えます。
オスはメスよりも体が大きいのが特徴で、メスが4~5cmほどで止まるのに対しオスは8cmほどに成長し1.5倍以上大きいです。よって販売水槽の中から雌雄を選ぶ場合は大きさが一番のポイントになるでしょう。
またオスは色彩パターンが2タイプありますが、尾びれの下側に赤い赤斑模様を持つタイプはオスのみが持ちますので、確定でオスが欲しい場合はそれをセレクトするのが良いかと思います。

産卵床の用意
本種は入り口が狭く中が空洞になっている「洞窟状の場所」に巣穴を作って産卵を行うケーヴスポウナーです。
具体的にはそのような特徴を持つ流木や、タコツボやツボのようなアイテムで産卵します。これが無いと始まりませんので、大きさ等を変えたものをいくつか設置すると良いでしょう。


少し砂に埋めてやれば掘って広さを調節できる良アイテム。
ペアリング~産卵まで
メスがオスの攻撃に耐えると次第にメスからアピール(オスの前で体をブルブル震わせる行動)を行いますが、狭い水槽だとメスがずっとオスに追いかけ回されることになり、本調子に到達できません。
よってある程度大きい水槽(60cm以上)を用意し、メスがしっかりエサを食えるような環境を構築すること。本種はアピストグラマ並に体は小さいものの、アピストのように30cm水槽で臨むと、ずっとメスがしばかれてオスへのアピールどころではなくなります。
またペアの結びつきは弱く、一度ペアリングを行ってケンカをしなくなっても、メスが産卵に失敗して食卵などを行ったり、何らかのトリガーがあるとあっさりペアが解消されオスのしばきが再開します。うまく仲の良いペアを抜けたとして、その後の安定性を考えると余裕のある水槽で臨むべきでしょう。

産卵から稚魚誕生まで
産卵した場合、メスの姿が見られなくなり巣穴にこもりっぱなしになります。主にメスが卵に水流を起こしてケアを行うためです。
孵化は産卵後3日ほどで始まりますが、孵化後数日は巣穴の中に留まりますので、繁殖がうまくいくと1週間ほどはメスの姿が見れないことになります。(稚魚はヨークサックから栄養をまかないます)
エサは産卵後5~6日ほどで食べ始めますので、メスが見れなくなった日から計算して孵化したブラインシュリンプを用意しておきましょう。市販されている稚魚用フードでも全く食べないことはないのですが、ブラインと比べて食いがかなり悪く稚魚の生存数が大きく落ちます。特に理由がなければブラインシュリンプを使って下さい。
稚魚遊泳と育成

そのうち両親は稚魚にエサを食べさせるためぞろぞろと巣穴から連れ出します。それが見られたら用意しておいた孵化したてのブラインシュリンプをふきかけて初期給餌を開始します。
その後は1日2回(朝・晩)ブラインシュリンプを与え、稚魚を育成していきます。稚魚は食い溜めができませんので、理想は1日何回も与えるのが成長が良いです。


稚魚の孵化サイズはかなり大きく、ブラインシュリンプを与えはじめて数日程度するともう刻んだ冷凍赤虫を食い始めるサイズになります。
その後は成長に合わせて、「刻み冷凍赤虫・ブラインシュリンプ」→「人工飼料・刻み冷凍赤虫」と段階を踏んでいって育成していきましょう。
人工飼料に安定的に食いついたあたりで親が稚魚を蹴散らすようになりますので、そうすれば親または稚魚(若魚)を隔離し、稚魚の育成は完了となります。

その他・補足情報
同種内変異:オスの尾びれ
オスの尾びれ模様は2型があり、尾びれ下部に赤斑を持つものと無地のものが存在します。
このことから入荷した個体達を赤斑の有無で「これはN.ヌーディケプスではないか?」と愛好家の議論に上がりやすいですね。(ヌーディケプスは尾びれ上側にライン模様がない認識であり、ライン模様がある時点で違うかと思います)
さて尾びれ下部に赤斑のないオスを使って子供をとると、「赤斑の無いタイプ」と「赤斑のあるタイプ」の2タイプが子供に出現します。(もちろん同ロットのもの同士で産卵・検証)

中間タイプの子供が生まれませんでしたので、雑種・地域変異の可能性は少なくオスの色彩多型でございました。
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参考文献
- Anton Lamboj and Robert Schelly. Nanochromis teugelsi, a new cichlid species (Teleostei:Cichlidae) from the Kasai Region and central Congo basin.
- ULRICH K. SCHLIEWEN & MELANIE L. J. STIASSNY. A new species of Nanochromis (Teleostei: Cichlidae) from Lake Mai Ndombe, central Congo Basin, Democratic Republic of Congo.
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